読んだ本(12月)
『下流志向』内田樹.2007
本書の副タイトルには「学ばない子どもたち 働かない若者たち」とある。
この時点で、もう、耳が痛い。
本書では、最近の学校での子どもたちを「消費者」の振る舞いだと指摘する。
そして、これはすでに親の世代にも見られると。
なるほど。現代の日本人の「消費者」感覚は、全くその通りだと納得できる。
いや、かなり的を得ていると思え、あらゆることをこの言葉で理解できてしまう気さえしてしまう。
しかし考えると、この先どうなってしまうんだろうと、耳どころか、頭も痛くなる。
でも僕には、さらりと書かれた最後の10ページくらいに、キラリと光が見え隠れするように見えた。
一つ紹介。
「時間」を限りなくゼロにするのが「都市」。だが、その都市生活の中で「時間性」を回復するためにどうするか?
例えば、『ルーティーンを守ること』を挙げる。
「日課を崩さない。なんか生活がもっとゆったりして平和なんですよ。時間の感覚とか四季の変化とか、朝夕の微細な空気の変化とか。雨上がりの土の匂いとか、最初の南風とか、台風の予兆の黒雲とか、そういうものが「イベント」としてくっきり際立ってくる。」
一見、不自由で退屈そうに思えることが、実は、豊かなのかもしれないと、同感する。僕には、この小さな提案が、キラ星のように輝いて見えた。
そして、まだ僕は「下流志向」には仲間入りしたくない、と思った。