病み上がりかもしれない。
久しぶりにひいた風邪が思ったより長引き、休みの日も遠出するのを控えていた。ただ、大須のオーディオ店にはよく行き、音響機器を探していたので、ようやく家の音響がデジタル、アナログのどちらも聴けるようになった。これでパソコンから音楽を聴くこともできるし、レコード盤を聴くこともできる。最近の一番の楽しみはそんなところ。でも、これは結構楽しい。
朝。顔を洗って、窓の外を見た。快晴だった。雲一つない空はクリーミーな青色で、家々や樹木は朝陽に黄色く照らされている。風は涼しい。もう秋。
家をでて、会社へ向かう。いつも自転車。このクロスバイクを買って、5年が経つ。ちょうどいい運動になるし、それに、気分がいい。地下鉄通勤は、空気も景色もよくない。朝食は、途中で食堂へ入った。納豆定食を注文。健康的。
会社に着くまで少し時間が余った。あの公園によってみようか。駅近くの噴水がある公園。交通量が多い街中にあるのに、住宅地にある公園よりおおらかで、ヨーロッパの公園みたい。コンビニでコーヒーを買って、ベンチに座る。陽が暖かく、風が冷たい。ホームレスの人たちが空き缶をつぶしながら、雑談をしている。その話し声が、なぜか心地よく思えた。向こうの樹木には、たくさんのピンク色の小さな花が咲いて、風に揺れている。
あのオジさんたちは、ここで寝泊まりしているんだろうか。もしそうなら、夏と冬はどれほど厳しいことか。でも、今、この瞬間の様子を見ると、すごく心地いい場所に思える。周りの、コンクリートのビル群で暮らしている生活より、ずっと。それでも、さっき自転車に乗ってこの公園を通りぬけていったサラリーマンや、犬と散歩しているおじさん、ベンチに腰掛けているおばあさんは、そのことに気づいているのかもしれない。
もう時間。会社へ向かう。JRの線路の上に架かる橋を通る。そういえば、この線路を30分も行けば、結構深い山々があると友人が言っていたっけ。
引っ越そうかな、と思った。