ジャズ、アルコル、美術館

最近、「ピカソとクレーの生きた時代展」に行った。

12月7日(日)
午後、名古屋市美術館へ。やや体調もよくなく、あまり絵にひかれなかった。ところが、展覧会場を出たところに、来場者が書く感想ノートがあり、これが実に面白かった。子どもの、コレが好きだ!という勢いあるスケッチ、文章の途中で書くのがやめられた未完のコメント、英語や韓国語で書かれた感想文など、多種多彩。それに、誰かのコメントに対してあとで別の誰かが意見書いてたりもしてコミュニケーションノートにもなっている。その場で書かれた直筆の文章は、その人その人がすごくでる。このノートは、素直にできあがったもの、という感じがして、それがまた笑えた。つい、30分くらい読みふけってしまった。この展覧会で一番印象に残ったのは、その、即興のジャズみたいなノートだった。

12月12日(金)
昼過ぎ、仕事中に、ふと、日曜日に見たクレーの絵が浮かぶ。急にまた見たくなり、仕事を切り上げて美術館に行くことにした。金曜日の美術館は、夜8時までやっている。6時半に美術館着。しかしなんとなくもの足りなくて、近くの飲み屋で麦酒。7時過ぎ美術館へ。「閉館まで一時間しかないですが、大丈夫ですか?」と聞かれたけど、見たい絵は一つだけだから、もちろん入館する。展覧会の会期があと3日だからか、人は結構いた。一度見ているのもあって、自由に行ったり来たりしながら、美術館を散歩。ほろ酔い美術鑑賞である。見え方が変わるなコレは。2枚の絵画を同時に見たりもできるようになる。酒は視野を広げさせるのだ。ふと気づくと、まだ7時半。結構楽しんだのに、まだ30分しか経っていない。酒は時間すら拡大させてしまった。


 美術館にルールはない。美術館には、育ちがいいのだろう人がたくさんいて、自分も気分だけでもそれにひたるのは好きなんだけど、美術なんかもっと自由に見てもいいとも思う。(たまにいる、ワーワーしゃべり散らしているバカヤロウはただのバカだが。)先入観とか、既成概念とか、あるいはこだわりとか、そういうものを持つと、ものが観えなくなってしまうことがある。
 芸術なんて、すごく身近なものだ。僕の周りにいる人にはそう思わせてくれる人もいる。例えば、車上荒らしにあったのにそれで割られたガラスの破片を見て、そのキラキラする青い光がきれいだった、なんてことを言っちゃえるやつとか、小雨降ってても傘をささずに雨を楽しめるやつとか。そうやって、生活の中に楽しみを見つけられる人は、小さな芸術家なのだと思っている。

[2008年12月18日]