僕は大学で、建築とデザインを学んでいたのだが、学校の勉強はなんだか物足りないなと感じていた。実物をつくっている世の中はそれはそれでインチキくさくて、モノをつくるプロでさえ「デザイン」は「付加価値」だと言っている人も多々いた。僕は、そうじゃないでしょと思っていたから、よく旅に出ると言っては、フっといなくなったりしていた。「デザイン」って、本当に大事な部分が抜け落ちてるんじゃないかな。そう思いながら、次第にモノから「人」に興味が移っていった。あるいは、アートとも言えるかもしれない。「デザイン」よりも「アート」には、野生ということや純粋さが感じられた。
僕は、アートと生きることは同じだと思っている。このKayaba Nikkiから続くブログは、その断片とも言える。だが、「生きること」と同義のアートは、「死」にもつながってしまう。アートは、孤独で、残酷でもある。ただ、そんな残酷さから救ってくれるものがある。それは、デザインである。ここでいうデザインとは、思いやりということ、それからユーモアということ、あと少しの数学的な考え方、それらが基本にある。
デザインに疑問を持ちながら、アートにひかれていき、アートへ傾きすぎてわけがわかんなくなったところを、今度はデザインに救われる。僕の個人的な経験としては、そんなあいまいな流れがある。しかし、この2つの関係は、言葉で表現するのが難しい。「歴史」の勉強不足もあろう。ただこの先も、この2つの間を行ったり来たりする、その振動している状態こそが、実は大事なのかもしれない。
[2008年12月12日]