旅人

僕の仕事場は社員それぞれの作業スペースが高さ1.5mの本棚で仕切られているため、棚で囲われた個人ブースのようなスペースが確保されている。会社がもっと小さい空間なら本棚なしで全体が見通せるのもいいと思うけど、ここで見通すのはやや広すぎるだろう。ありがたいことに、僕の席は窓際のスペースなので明るく、風もふくし、雨や夕日も楽しめる。
今週から、仕事場の自分のスペースの足下にタイルカーペットを敷いた。メーカーI社さんが見本にくれたものがたくさん余っていたのでもらってきた。今後、僕のスペースは土足厳禁とする。靴もサンダルもなしで仕事。家っぽく、楽。来年の夏は、藤ゴザを買ってきて敷いてみようか。

今日はスカッとした快晴。窓を開けていると、風が入ってくる。秋の冷たい空気が気持ちいい。窓から見える建物の屋上では、オバさんが洗濯物を干している。清々しい秋晴れだと、日常の風景だって、見ているだけで気持ちいい。

ところで、僕はものを考えるとき、きちんととしていない時の方がいいようだ。なぜかその方が頭が働く。例えばそれは、気が散って窓からオバさんが洗濯物干してるナと眺めている時とか、仕事帰りの電車とか、ちゃり乗ってるときとか、風呂とか、喫茶店でコーヒー飲んでスケッチしてる時とかだ。それらはたぶん、「旅」の気分に近い。旅の解放感からか、なんか周りをいつもと違う目で見れて(観れて)いる、そんな状態。あるいは、家で読書する時より、本屋に立ち寄って目に留まった本や雑誌をあれこれ立ち読みする時のが、頭が冴えてるような。いろいろ発想がわくし、考えがまとまったり、、とにかく考えていて楽しい。

もちろん、制作、作業を進ませるのは、家や仕事場に籠るのがいい。でも僕の場合、発想や考えるのは別。旅をしているときのように気分が開けている時、ものごとに光が見えてくる。そしてそれは必ずしも本当の旅行にでかける必要はない。近所の散歩でもいいし、座る場所を変えるだけでも、なにかパッと開けてくることがある。そういう意味で、僕は、どこにいてもいつでも、旅人でありたいと思う。

[2008年10月2日]