日記 [2008年5月]

080529
自分の好きなものがどんどんつながっていくことが多いけど、それは広く言ってアーティストの場合が多いように思う。逆にデザインの分野では、いいなと思える人は少なく、しかもなかなかつながっていくことがない。でも、そのデザインの側で「イイ!」と思える少数の人たちに共通しているところは何なんだろうか。
工学、というか「技術」に対する感覚。そして、「野生」ということを感じるかどうか。大工のような狭い意味だけでなくて、現代の「職人」と呼べるような仕事をしているかどうか。かな。
野生ということは芸術に通じる。そして、芸術家はみな職人と言えるかもしれない。


080523
パブロピカソの彫刻には空きビンや自転車のサドルやハンドルが使われる。それらの材料は、たまたま彫刻に使われたわけではない。ピカソが自分の作りたいもののために、ガラクタの中から探してきたものだ。作品は偶然できるんじゃない。つくるものだ。

一つの写真集をつくりはじめる。2週間でつくろう。

風邪気味だが久々に飲む。
特に金曜日。終電近くの電車内は劇場と化す。


080520
最近のほぼ日ではシルクデュソレイユが特集されていて、糸井重里やるなと思っていたら、今日は横尾忠則の展覧会の話を書いていた。糸井重里やるな。

先週、古本屋で横尾忠則の日記というのを見つけて買った。1982年からの5年間の日記を本にしたもの。こんな本、誰も買わないんだろうか、絶版になったものらしい。今のネット上の日記と通ずるものがあったし、単純にその本の中に僕の誕生日もあったのに惹かれて、買ってしまった。横尾さんの描く絵とかには興味なかったんだけど。が、横尾さんの経歴はすごい。いろんな「宣言」しながら活動し続けている。アーティストの方向は建築やデザインの仕事とは対極の活動とも言えるが。小さくてもいいから続けたい。

今回の横尾さんの展覧会は、世田谷美術館でやっている。で調べてみたら、世田谷美術館は結構おもしろい展覧会をやる美術館のようだ。行くしかない。


080517
インド人は屋上が好きだ。夕暮れの時間になると町中の人たちは皆、家の屋上にあがる。昼間はもう暑くて暑くてしょうがないのだけど、夕方以降には涼しい風が吹いて心地よい。アジアはどこへ行っても、気持ちのよい風がヒューヒューと吹き抜けている。昔よくしていたアジアの旅のせいもあってか、僕もすっかり屋上好きになってしまった。

今日、事務所の屋上へあがった。屋上へ上がることは意図されていないので、階段はない。でも点検用のハシゴをのぼれば行けそうだ。そう危なくはない。夕暮れ時のほとんど会社の人がいなくなった時、同期の仲間を誘ってコッソリ上がった。

風が心地よく、開放的な空気。日本もアジアだな。上がることを計画していない屋上は、ザックリしたつくりで、逆に居心地がよい。風が似合う場所。こういうデザインされていないモノに、構図なんて関係なしで撮られた写真に、遊んでいたらできちゃったようなギターの音に、スバラシイものだってある。そういうものに出会える感性を忘れてはいけないと思う。

屋上でスパイダーマンについて談笑していたら少々長居しすぎた。ハシゴを降りる。と、入り口の扉のカギが閉まっているではないか。苦笑。屋上に閉じ込められたらしい。ノックしたらすぐ気づいてくれ、開けてもらったが。携帯電話もなかったので、事務所全員が帰っていたら、屋上キャンプするところだった。

「どこ行ってたの?」と尋ねられ、「屋上です。」と答えると、「パラペットの納まりを見学してたの?」とのこと。「、、ハイ、あと屋上の防水とかの納まりを見てました。。」
というわけで、注意されるどころか、屋上の各種納まりについて解説してもらえた。なるほど。屋上に上がることは禁止されていないのか。いや、実物を見学することは本当に勉強になるのだ。

これからは、毎日、屋上の見学をしようと思う。


080515
中国四川での大地震発生から三日経ち、死者一万九千人を超えた。人はすぐに忘れてしまう。特に映像で見ただけのものは。
中国で暮らしている友人は、無事のようだ。


080514
帰宅後NHKを2本見る。岡倉天心。西洋を知った人の明るい考え方をしているように思えた。こういうのはデザインする人には大切なんだろう。その後、荒木経惟。31歳で会社を辞めて写真家として宣言したとのこと。「宣言」。いい言葉ですね、アラーキーさん。


080513
組織に入り、毎日のやったこと、建築のことは手帳にメモし、このブログにはそれ以外をメモしている。この2つに分かれている状態ではダメだな、全く。そして、ブログではなくて日記を書きたいのだが。うーん。

夕食あさりの味噌汁、うまかった。身体が要求するものを食べるのが一番健康だとよく聞く。今日の体調にはアサリが合ったということか。そういえば風邪気味だったからその影響、かもしれない。「だし」的なものを食べたくなるのは、身体に何が足りないという合図なのだろうか。徹夜で作業していて疲労が溜まってるであろう時には、きまって体に悪そうなものが食べたくなる。身体の声を聞くのは大事かもしれぬ。今これを書いていて、何が一番食べたいか。んー、麦酒か。いや。もう寝よう。


080511
久々に料理をした。サラダ、パスタ、肉料理。それにパンと、留学中トリノで買ってきた赤ワインを開ける。ワイン、懐かしい味だった。味とか匂いは案外忘れないものなのか。


080510
この時期は「眠い」と言う人が多い気がする。ジツハ自分もそうだったりする。でも、今日会った人たちはそうじゃなかったな。

原智彦さん、相変わらず元気だった。演劇初日は神様が降りてくるんだよとのこと。わかる。何に対しても言えるけど「一番初め」というものは大変で、でもなんか神がかるんだよな。その後が実力とのこと。
原さんの演劇後に、他の出演者とも話した。ダンスやってる出演者は、印象的な女性だった。本当に楽しんでるのだろう。糸井さんのダンサー最強論は真だな。

その後いりなかのライブにて。トダさんとミゾベさんは大学時代に農業で起業したとのこと。M-easyという会社。教育とかの活動もしていて刺激になる。建築とコラボできそうで今後に期待。陶芸家のヤギさんも相変わらずヘンなことをたくらんでいた。彼らは常滑の「食」の豊かさを語りまくっていた。


森博嗣がブログの中で、「小説くらいの文字数使って書かないと説明できないかも」と書いていた。自分もたった一行や一言とかでちょこっと言ってるのでは、伝わらないとこは多々ありそう。本一冊分くらい書いて、一つのことを伝えるくらいがいいのかも。つまり論文。でも論文では全然おもしろくないから、やっぱり小説だなあ。


080508
ドイツで会った友人のブログ見ていたら、東京の知人のブログにリンクで飛べてビックリし、さらにそこから大学の先輩のブログに飛べて、そのブログのリンクから自分のブログに飛べた。うーん世界は狭い。インターネットをアクティブに使ってる人は案外少ないのかもしれない。いやいや、自分も「メモ」なんて言ってるうちはマダマダだな。そういえば、20代になって「リンク」がつながる確率が高くなった。常滑でたまたま知り合った人は、自分のファンだったアーティストの友人で、その人の師匠は僕が10代の頃から影響受けまくった人で、でその娘は去年行った事務所と仲良しらしく、、というように、偶然にしてはつながりすぎる。「共生」とかってのは実感わかないけど、「共鳴」って感じは確実にあるな。そういえば影響も「響く」って書くじゃん。声も音か。ははん、会話は音楽だな。なんちゃって。とにかく、いかにもっと大きい音を鳴らそうか。創造には量も必要だから。


080506
近況について。

仕事、まずは商業建築を設計するチームへ。
タイルパターン考えたり、図面ひいたり、書類つくったり。
毎日ホント勉強。
アットホームな人間関係でよい。みなさんキャラ濃いめだけど、親切。
社会人一年目は守られてるんだろうな色々。なら出来るだけ動こう。

一級建築士試験まであと2ヶ月ちょい。マズイ。

ようやく写真集一冊完成。
自分で現像して、カッターで一枚一枚切って、スティックのりで台紙に貼って。テマヒマかけすぎ。

『Shiro Kuramata-倉俣史朗の世界』
回顧展のカタログ。今年3月に復刊したらしく購入。
「消えることを覚悟の上で、もしくは消えていく、そのことを目的にして、君はデザインした。」磯崎新